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2021.09.11

「高度専門職」資格についての私見 (578)

「高度専門職」資格についての私見

この新しい資格ができて10年弱。
2020年12月時点で「高度専門職」(1号2号併せて)の資格者16,554人。
ちなみに「技術・人文・国際業務」資格者が283,384人。
この新しい資格者の数が多いのか少ないのか正直、分かりません。

就労系ビザを持っている外国人の何人かに聞くと
知っているので、それなりの知名度はあるのかなと思います。

ただ、会社側のこの資格の認知度はまだ低い気がします。
会社側もこの資格を使って人材募集のアピールをしたらいいのにとは思っています。


この在留資格は「技術・人文・国際業務」から資格変更をすることで得られます。
法務省が定めたポイント換算表で一定数以上のポイントがあれば変更できるのですが、
その項目の一つに年収項目があります。

「優秀な人材はそれなりの年収をもらうべき」という法務省の考えがあるのかは不明ですが、
「高度専門職」を持っているということは、
その会社はそれなりの給与があると傍からも分かるということです。


就職先を探している外国人が「高度専門職」資格を有する人が社内にいると知れば、
自分も頑張れば給与が上がると目でみて分かるということです。
就職先の候補に挙がる可能性が増えます。


外国人は「日本語ができない」、「日本の習慣が分からない」というのは認識不足だと思っています。
確かに技能実習生の一部の人や、「技術・人文・国際業務」資格を有していてもコミュニケーションがとりにくい人もいます。
日本語の勉強が不十分であったり、そもそも日本に興味が薄い(ただ海外に行きたかっただけ)という理由もあるかと思います。
コミュニケーションが取りにくいと、外国人は怖い、外国人の扱いは難しい、外国人の採用は控えようとなっていくのではないかと勝手に思っています。


しかし、日本語学校から大学や大学院に行っている人で、そこからさらに、日本で就職したいと考える人は、
日本の何かに興味を持ち、できるだけ長くいたいと思っている人達です。
大学卒なら5.5年以上、大学院卒なら7.5年以上日本で生活しています。
従って、コミュニケーションは十分とれますし、日本の習慣も理解しています。

よほど裕福な家庭でない限り、学生時代に日本でのバイト経験がありますし、
日本人との交流会に参加していたりしていて、
私達が想像する以上に、日本の社会を知っています。

日本の習慣や社会、日本人の性格などを知って尚、日本で働こうと思う人は、
日本人側が壁を作らない限り、大概の人は日本で上手くやっていこうと思っています。


ただ一緒に働くとなると、雇い入れる側に注意や覚悟がいるとは思います。
私は行政書士になる前から日本語教師として数多くの外国人と接してきました。

彼等の中には、「自分は外国人。日本人ではない。なかなか日本人には受け入れられない」という意識があるので、
周りが思っている以上に疎外感、孤独感を感じている人もいるということです。

技能実習生であれば、年に数回監理団体が実習先に視察に来た際にヒアリングを受け、
場合によってはカウンセリングを受けたりして精神的な部分のケアをする体制があります。
普通の会社が初めて外国人を雇うとなると、そういったケアを忘れがちになると思います。
しかし、外国人が疎外感を感じないような環境を作るのが大切です。

これは単にシステムの構築だけでなく、周りの日本人の意識改革も必要だということです。
そういった意味では、会社内にいる日本人の覚悟もいるのかなと思います。

次に外国人は雇用時の契約書が大事です。
日本人も雇用契約書に署名をしますが、正直内容を細かく見ていないのではないでしょうか。
「契約内容にないけれど、ついでだから」とか、
「まあ、ちょっとやってくれよ」は日本人同士であるならば通用するかもしれません。

しかし外国人には通用しないと思ってください。
先ず契約書にサインする段階で細かく契約書内容を確認してくることがあると思います。
ですので、日本語のみの契約書は理解しづらいので嫌がるかもしれません。
法律でも、相手が十分に理解できる言語をつけることが要求されています。
「契約内容とは違うけど、まあ、ちょっとやってよ」は通じません。
それに、現実的にできません。

多くの外国人就労者が持つ「技術・人文・国際業務」資格は、仕事に制限があるのです。
技術系の人が販売はできないし、
国際業務で資格を取った人は、工場のラインには入れないのです。
これに違反すると本人だけでなく会社も罰則を受ける可能性があります。


ただ現実問題として例えば技術系の人が、その物の営業や販売をした方が良い場合もあります。
そんな場面に「高度専門職」資格は対応しています。
この資格のウリの一つに「複合的な在留活動の許容」というものがあります。

これは、上記の技術系の仕事に関連していれば、
別の業務もできるというものです。
会社側としては、ある仕事に関して一部分だけでなく、全体を任せられるというメリットがあります。
 
 
仕事をする側も一部分だけよりも、全体を任せられる方がやりがいが出てくるでしょうし、
そうするとより一生懸命に、又長く会社に貢献してくれるのではないかと思います。

少子高齢化の日本で、これからの労働力の確保は大変です。
どうしても外国人の手を借りることも視野に入れなければなりません。
日本人であろうと外国人であろうと、雇用するなら優秀な人材が欲しいものです。

留学生として日本に長くいる外国人を採用し、
「技術・人文・国際業務」資格から「高度専門職」資格に変更し、
それを会社側がアピールすることで、
次の人材候補の目に留まるといったこともあると思います。

私の全くの私見を書いていますが、せっかくの資格
会社側も有効利用できるのでないかと思っています。
2021.09.01

「日本人の配偶者等」ビザの検討をしている方へ (575)

最近、海外から当事務所HPを通じて「日本人の配偶者等」ビザに関する問い合わせが入って来るようになりました。
まだコロナ禍で日本への入国も厳しい状況ですが、
外国との行き来が再開したら、外国人配偶者や子供と共に帰国しようと検討されている方が増えているのでしょうか。

当事務所では、できるだけ知り得た情報は公開しようと思っています。
しかし、ビザ(在留資格)は個々の状況により、準備する資料が変わってきます。
HP上で細かい情報(レアなケース)を載せていると、全体像が見えにくくなり、
ビザ(在留資格)が非常に取りにくいという印象になってしまいます。
それ故HP上では、どうしても多くの人に共通している事項を中心に情報を掲載することになっています。

このHPを見ていただき参考になれば幸いですが、
それでも懸念が拭えない場合はメールやLine等でご相談いただいて結構です。

当事務所で扱ったことのない国や、ケースによっては確認作業が必要になる場合もあります。
確認作業に入ってしまうと、報酬が発生いたしますので、
ご相談の段階では、お答えできない部分があるかもしれません。
しかし既知の情報であれば、一般的な情報でなくてもお答えできる部分はあります。

海外から配偶者や子供を呼びよせるだけでなく、
国内で「日本人の配偶者等」資格への変更を検討されている方も
同様に対応させていただきます。

御依頼にかんしましても、全国対応でしております。
(大阪入管が取り扱う地域以外は交通費等の実費は必要になります)

当事務所HPをご覧になり、それでも懸念が晴れない場合は
気兼ねなくご連絡ください。
2021.08.20

日本人の配偶者も提出書類があります (572)

国際結婚をして共に日本で暮らす場合、
役所に婚姻届けを出せばおしまいではありません。
先ず、相手の国でも結婚手続が必要な場合は、それをしなければなりません。

相手の国、日本の双方で結婚手続が終わると、「日本人の配偶者等」ビザを申請(変更)します。
相手側の在留資格が変わるわけですから、その人の申請書類や立証資料は当然必要ですが、
日本人の配偶者も立証資料の提出を求められています。

提出資料として
1.申請書
2.提出資料
3.戸籍謄本
4.住民票
5.納税証明書
6.身元保証書
7.質問書
8.交際・交流に関する立証資料
9.外国機関が発行する婚姻証明書
10.提出資料の追加請求
11.実体調査

上記の提出項目を見れば分かるように、先ず婚姻状態にならなければ、この在留資格は提出できません。
また、10や11からも、提出者の個々の事情を詳しく調査し、判断をすることが分かります。
知り合いがOKだったので、私も大丈夫と安易に考えないで、
しっかりと資料を作成し、立証していく必要があります。

留学生の資格から配偶者の資格を求める場合は、
勉強が嫌になったが、まだ日本に居たいが為の偽装かと思われます。
日本語学校や大学等の出席率や成績等を求められることもあります。

また交際期間が短い場合は、双方の親と写っている写真や、
メールのやり取りの文章をつける場合もあります。
2021.08.03

外国人被雇用者の公的保険について (570)

日本で働く外国人は、日本人同様に公的保険に入る義務を負います。

1)雇用保険
2)健康保険(又は国民健康保険)
3)厚生年金(又は国民年金)
です。

雇用保険は失業に対する給付のため、
健康保険は病院等で発生する治療費が3割になると説明すると、
あまり問題なく加入の意思を示してくれますが、
厚生年金(又は国民年金)は加入を嫌がる方がいます。

この年金制度は、日本人のみが対象となるわけではなく、
日本に中・長期に滞在する外国人も加入しなければなりません。

彼等が加入を嫌がる原因は、自分達はいずれ母国に帰る。
母国に帰るとその年金はもらえないからという理由が多いです。

現役世代が今払っている年金の多くは親世代や、その上の世代に支払われています。
いつか帰国しようと考える外国人被雇用者にとっては、自分は払い損だと考えるのです。
彼等の言い分は分かりますが、法律で決めれれている以上拒否できません。

個人的には「年金」というネーミングが良くないのではと思っています。
なぜなら、この厚生年金(または国民年金)は老齢年金だけでなく、遺族年金や、障害年金も含んでいるからです。
日本で働いているときに仕事で事故にあい、亡くなったり障害を持つ身になった場合の保障があるのです。

来日から帰国まで、事故なく仕事ができることに越したことはないですが、仕事中の事故は大概予期せぬものです。
それに備えるために加入を勧めることは、彼等にも悪い話ではないのではないでしょうか。

帰国後一定期間内に手続することで、脱退一時金が支払われます。
私は厚生年金や国民年金の加入を渋る方に対して、そのように進言しています。


中には「日本人でも国民年金に加入していない人もいるそうだ」と言ってくる方もおられます。
その日本人はビザ更新関係ないですからね。

外国人就労者が公的義務を守らなければ、ビザ更新に影響がでます。
また思っていた以上に日本が気に入り、永住権や帰化をしようと申請するときに、
この公的義務を果たしていないと申請ができません。

申請要件に「公的義務」を果たすことが課せられているからです。
これをしていないと、日本国にとって優良な人物ではないとされるのです。

目先の事だけでなく、将来の選択肢を多く残すようにした方がいいのではないかと思います。
この辺りをしっかりと雇用する前に説明すれば、少しは納得してもらえるのではないでしょうか。
2021.07.30

高度外国人材ビザの雇用側のメリット (568)

就労系の代表的なビザに「技・人・国」ビザがあります。
これの発展形?のビザとして「高度外国人材」ビザがあります。

「技・人・国」ビザを持つ外国人の中で、優秀な人材に「高度外国人材」ビザを与えて、
日本に長く居てもらい、日本に貢献してもらおうという趣旨です。

まだ新しいビザですが、日本で働く外国人の間で少しづつ認知されてきているようです。

このビザを取得することで、外国人被雇用者にメリットが生まれてきます。
ビザの期間が長くなるとか、場合によっては自国の親を呼び寄せられるとか、
永住を考えている場合、永住権の取得が緩和されるとか・・・

しかしこのビザは外国人本人だけにメリットがあるわけではないのです。
考えようによっては雇用側にもメリットがあります。

先ずこのビザ取得には会社の協力が必要になります。
このビザの要件の中に、今の会社に何年在籍しているかや、年収がいくら以上であるとか
会社に関するものが含まれます。

会社側が外国人被雇用者を他の日本人と同様か、それ以上として認めていなければ、
このビザは取得できないのです。

つまり、外国人が日本で就職先を探すときに、
このビザを持っている外国人が働いているということは、
外国人が何年も働ける環境で、報酬もきちっとしていると判断するわけです。

会社に高度外国人材ビザを取得している者がいるとアピールすることで、
優秀な外国人が目を向けてくれるメリットが生まれるのです。

しかも「技・人・国」ビザでは、できる仕事が限られていますが、
この「高度外国人材」ビザを取得すると、段階的ではありますが、
この制限が緩められます。
社内で幅広い仕事を任せることも可能になってくるのです。

今いる外国人被雇用者の中に優秀な人がいたら、
「技・人・国」ビザから「高度外国人材」ビザへの変更を勧めてみてはどうでしょうか?
2021.06.09

日本語学校の校長要件(561)

日本語学校の設立申請の書類を入管に提出する前に、
設立者(理事長)、校長、主任講師がいなければなりません。
その中の校長ですが、校長要件があります。

1.日本語学校教育機関の運営に必要な識見を有し、
 かつ、教育に関する業務に原則として5年以上従事した者であること。
2.他の日本語教育機関の校長を兼ねる場合には、
 それぞれの日本語教育機関に副校長(1.を満たす者に限る)を置いていること。
 ただし、隣地に立地する日本語教育機関の校長を兼ねる場合は、この限りではない。

と、されています。
入管は告示解釈基準を設けていて、上の要件の基準も公表しています。

「日本語学校教育機関の運営に必要な識見」とは、
1.出入国管理及び難民認定法令
2.専修学校及び各種学校が設置する日本語教育機関については、学校教育法令
3.日本語教育機関を運営する上で必要な以下の事項
  ア.職員の人事管理に関する事務
  イ.生徒管理に関する事務
  ウ.施設・設備の保全管理に関する事務
  エ.その他日本語教育機関の運営に関する事務

上記の識見を求めています。

他に
・「5年以上従事した者」とは、日本語学校設立申請を入管に提出する時点で5年以上の経験を有していること。
・専修学校である日本語教育機関においては、当該日本語教育を行う学科の長を副校長とみなすことができる。
・校長、副校長は必ずしも常勤である必要はないが、校長と副校長の連携等適切な管理体制が整備されていること

と、示されています。

過去に中学校や高校で校長をした経験のある人を校長に据えることはできますが、
留学生に関わる法律や、日本語学校の実体、それに基づく運営方法などの勉強をしてもらう必要があります。
2021.06.04

帰化の条件(会社経営者や個人事業主の外国人) (558)

日本で会社を経営していたり、個人事業をしている外国の方で、
帰化を考える場合、

先ず、税金を払っていることが大事です。
会社の税金だけでなく、社長個人の税金も払っていなければなりません。

犯罪歴(前科)も調べられます。
前科があると帰化できません。

前科にはなりませんが交通違反。
交通違反は直近5年間のものを調べられます。
1回、2回は問題ないようですが、
回数が多いと、審査に影響がでます。

2012年に法改正があり、外国人でも年金を払うようになりました。
厚生年金、国民年金のどちらでもいいですが払うようにしてください。

会社の大きさによっては、厚生年金に加入していなければなりません。
この場合、会社が厚生年金保険料を払っていることも条件になります。

次に日本で生活する財力があるかです。
貯金の多さではなく、毎月安定した収入があることの方は大事です。
帰化申請の前に、友達などから借りて、通帳に大金を入れないようにしてください。
説明を求められます。

日本では2重国籍は認められていません。
本当にいいのか聞かれます。

また、思想も聞かれます。
日本を貶めようとする人は帰化できないということになります。

面接のときに、日本語のチェックもあります。
簡単な日本語のやりとり、読み書きです。
小学生レベルの日本語は必要です。
2021.05.28

留学生の専門学校での学科と就職

外国人留学生が日本で就職するときに、
大学や専門学校で学んだ内容の関係性が重要になっています。

しかし、最近の専門学校の学部や学科の名前を見ただけでは、
何を勉強しているのか正直分からないものもあります。

例えばある専門学校の「国際ビジネス情報学科」。
学科名を聞いても何を勉強しているのかピンときません。
授業内容を見ると、「経営」「経済」「会計」「貿易」「販売」「簿記」「日本語」
あげくに「ビジネスマナー」まで・・・
何でもあります。

ここの学校の留学生は、色々勉強しているから就職に有利なのでしょうか。

あれもこれもとつまみ食い程度の勉強しかしていなければ、
その留学生に専門性があるとは認められにくいでしょう。

実際、入管は就労ビザの審査をする際に、
習得単位の内容と、業務の関連性を示す資料を要求します。
成績表や出席率なども。
授業の内容をかなりチェックしているように思います。


また、「国際ビジネス情報学科」とは名ばかりで、
授業の半分が「日本語」である所もあります。
「日本語」は「通訳者養成」が目的の授業でない限り、
専門性は認められません。
   日本で「通訳」系の学科で学んだ留学生でも、
   通訳として働く為には、
   原則3年間の実務経験が必要になってきます。

また、「ビジネスマナー」は専門科目とは認められていません。


外国人の採用を考えるとき、
「そもそも自分の会社の業務に外国人が雇えるのか」
「自分の会社に欲しい人材には、どんな専門分野の知識が必要なのか」
を知っておく必要があります。
2021.05.18

就労期間が1年しかない

就労系ビザの期間についてたずねられることがあります。
「同じ大学で学び、成績も出席率も同じくらいなのに、
友達は3年の期間で、私は1年しか期間がありません。
なぜですか?」と。

就労系ビザの審査対象は、当該外国人だけではありません。
雇用側の企業も審査の対象となっています。
大手企業で、何十年と会社が続いている所は、
社会的に信用が高く、入管としては
ビザの期間を長くしても大丈夫だろうと判断します。
ビザ変更や、更新の際に入管に提出する書類も
少なくてすみます。

一方、設立間もない企業であったり、規模が小さいとかになると
入管は審査時に、
この会社は継続性があるのか心配だ。
もし倒産でもしたら、外国人はどうなるのか?
ビザの期間を短くして様子を見ようとなるのです。
提出書類も、大手企業に比べると多くなってきます。

最初の期間が1年でも、会社が継続できていて、
当該外国人に問題がなければ、
更新期間は長くなっていきます。