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2021.09.13

「日本語学校」についての私見 (579)

「日本語学校」についての私見

かつて中国や韓半島などから多くの人が職を求めて日本に来たこともありましたが、最近は外国人が一度にどっとやって来ることはありません。
日本は他国に比べて外国人が移住しにくい国になっています。
しかし、日本は少子高齢化に歯止めがかかりません。
現実的に外国人労働者に日本を支えてもらわなければならなくなってきています。
それをなんとかするために「特定技能」という資格を2019年に国が作りました。
これは職種の技能と、ある程度の日本語ができれば海外から日本に働きに来ることができるといものです。


私は技能と少々の日本語のみで日本で生活し働いていくのは大変だと思っています。
やはり日本の文化を知り、色々な言い回しを覚え、TPOに合わせた表現を使わなければ日本人に受け入れられないように思います。


日本語学校は大学や専門学校へ行くための準備期間です。
有名校の進学を目指す学校や日本の文化を多く知ってもらおうとする学校等、その学校によって特徴は違いますが、
どの学校も普段我々が場面によって普通に使い分けている日本語や、日本の習慣、日本の文化などを教えることで、
日本を知ってもらおうとしています。
ここで対応できた学生が、大学や専門学校に進み、また日本での就職を考えるのです。


私は、日本語学校は将来の日本の労働力を支えてくれる人材を育てる大事な場所だと思っています。
しかし、行政書士として日本語学校の設立の手伝いをしたり、
日本語教師として実際の現場や学校経営を見てきて思うことは、
日本語学校は本当に大変な場所だということです。


日本語学校と聞くと、「日本語を教えているだけ」と思うかも知れませんが、
そんな事はありません。
文化や習慣が違いますから、そこも知ってもらいます。

私が日本語教師を始めた頃の話なので、随分昔の話ですが、
その学校は、中国からの留学生を迎えて最初のオリエンテーションで、
玄関で靴を脱ぐ事とトイレの使い方を図解で説明していました。

日本では玄関で靴を脱ぎます。
しかしこの習慣は外国では一般的なものでもないようです。
今は知りませんが、当時の中国は家の中でも靴を履いていました。
ですから日本に来ても、靴のまま部屋に入ってしまうのです。
寮に迎え入れる日には、部屋に新聞紙を轢いて床が汚れないようにしていました。


寮の大掃除の日には水道の水を床に大量にまいて掃除して、下の階の天井に水漏れし、
下の階の住人に迷惑をかけたこともあります。


トイレも、中国の紙は水に溶けにくいので流さないのです。
学校のトイレは使用済みの紙が便器脇に山積みになっていました。


別に彼等に悪気は全くありません。
文化・習慣が違うだけです。
しかし日本で生活する為には、日本に合わせてもらわなければなりません。


ゴミの分別もそうですし、
春節であっても、夜中に爆竹を鳴らして騒がないこともそうです。
こういう事を日本語学校では一つ一つ知ってもらうようにしています。
一度で駄目なら二度、三度と。


日本語学校の中にいる時は、
日本語を教えているよりも、
日本の文化・習慣、日本人の考え方等を教えている事の方が多いのではないか
と感じていた気がします。


本当に苦労は多いと思いますが、
1年~2年経って、彼等が日本の生活に慣れてくると、
雰囲気が変わってきます。
日本に来た頃は、ちょっと腰が引けて消極的であったり、
逆に尖って見えたりした人達が、
落ちついた元々の表情になっていきます。


この頃になるとコミュニケーションがとれるようになり、
少しでも日本で頑張ってほしいと思えるようになります。

日本語学校というのは、大学や専門学校、時には就職の経由地でしかありません。
多くの学生は先の目標を目指す為に日本語学校へ通うのです。
少し淋しい立ち位置かも知れませんが、
学生が日本で暮らしていけるための礎を築く大事な場所です。


日本語学校経営は簡単にはできないと思っています。
どの日本語学校も、毎年学生募集で苦労をしています。
募集予定数に届かない事は経営上問題ですし、
学校の規模で在籍者数が厳格に決められているので、
予定人数を超えて入学させることもできないのです。
この部分の安定がなければ、経営が安定に向いません。

実務面でも、
先生だけでなく、日常生活の面相を見れる事務員、
通訳の確保が必要です。

日本に来たばかりでは自分で部屋も借りられないので、
学校の近くに寮を確保しなければなりません。

市役所に連れて行ったり、病院に連れて行ったり・・・


相手が日本人であれば、
「自分で調べて行動してください」
と言えることが、彼等相手にはできません。
1年の中で落ち着いた日を送れるのは、
卒業式から数日間くらいでしょうか。

その時期に、
大学を卒業し日本の会社に就職を決めて遊びに来てくれる人もいます。
そんな時は、日本語学校はいい場所なんだと思います。


日本語学校は、将来の日本を助けてくれるかもしれない人材を最初に育てることができる
やりがいある業界だと感じられる時でもあります。


冒頭でも書きましたが、これからの日本はどうしても外国人の労働力が必要だと思います。
そうであるならば、日本の事を何も知らない海外の人を雇い入れるよりも、
日本の事をよく知っている、日本語でのコミュニケーションもできる外国人の方が
色々安心できるのではないでしょうか。
その為に日本語学校が果たす役割はこれからも大きくなると思っています。


最近は学生を日本に呼び、授業料だけとって
後はいい加減な授業や指導をしている学校もあるようです。
学生からすると、どうすることもできず泣き寝入りしかない。
日本語学校の数が増えると、中には悪質な経営者も出てくるのでしょう。
そのような学校が減り、優良な日本語学校が増えてくれる事を節に願っています。