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2021.03.03

魔法の言葉「ありがとう」

私は行政書士ですが、キャリアとしては日本語教師の方が長いです。
中学、高校の頃は、とにかく学校の先生が嫌いで「教師」にだけはなるまいと、
大学の授業も教員に関する授業はことごとく切ってきました。

それが何の因果か、30歳を過ぎてから日本語教師へ。
別にたいそうな理由などありませんでした。
なんとなく・・・そんな感じでした。
それが19年ほど前です。

意外に長くやっています。
最初の12年は専任講師、今は行政書士と兼務。

専任の頃は1年半~2年のクラス担任制。
一度受け持った学生は、原則クラス替えなしでした。
授業だけではなく、生活面、精神面等のケアは必須でした。

今では考えられないかもしれませんが、
個人の携帯番号をクラスの学生には教えるようにと、
学校側からは言われていました。

学校を出た後も、土曜・日曜、夜中、朝方、
よく電話やメールが来ました。
今思えば、よく対応できていたなと思います。
体力あったなあ~と(笑)

ここまですれば、クラスの学生と親密になっていきます。
どんなに腹立つ学生でも、最後は我が子のような感じです。
今、連絡をくれる元学生の多くは、この頃の人達です。

現在は、
授業は週2日、午前中だけです。
授業以外の事に関わることはありません。
教室内だけ、授業中だけの付き合いです。
やはり、学生との関係は薄くなります。

それでも、この時期はちょっと感傷的になります。

先週、私の授業が終わりました。
授業の最後の最後のコマは、毎年雑談です。
「1年間、私の拙い授業を聞いてくれてありがとう」
という気持ちで挨拶しています。

毎年教室を去るときに、何名かの学生が教卓の所まで
「先生、ありがとうございました」
と来てくれます。

結構うれしい言葉です。

この言葉は、自分でも意識して使っていますが、
例え今まで嫌なことが連続していても、
全部チャラになるような「魔法の言葉」だと思います。


随分昔ですが、1年半手を焼いた学生がいました。
個人的に私は好きでしたが、他の先生は嫌がっていました。
いつもイライラしている様子で、周りの学生とも馴染めない、
先生達ともうまくいかない感じの学生でした。

私の授業の後は帰ろうとはせず、色々吹っ掛けてきました。
担任だったこともあり、時間の許す限り聞いていました。

1年半で、周りの学生とは何とかうまくいくようになっていきましたが、
それでも最後まで一部の先生とはうまくいかなかったようでした。


そんな学生が、卒業式も終わり、
学生が学校にほとんどいなくなった頃に戻ってきました。
「先生、1年半私を見捨てないでくれてありがとうございました。」
って本当にボロボロ泣きながら言ってくれました。


「親の期待が大きい割に、自分に自信がなかったし、
不安でどうすることもできなかった。
同じクラスの学生や先生達のおかげで乗り越えられた。
これからも日本で頑張る」

というような事を言っていたような記憶があります。

この学生は日本のトップクラスの国立大学へ進学しました。
今も日本で頑張っているようです。

この時期いつもこの学生のことを思い出します。


今回も、別のクラスの授業も全て終わり学校を出た所、
数名の学生が待っていました。
一緒に記念撮影して、言葉をいただきました。

「1年間ありがとうございました。楽しかったです。」って


「ありがとうございました」は良い言葉だと思います。
それと同時に、私には別の意味も含まれます。


これを言ってくれた人との関係が、
一時的、または恒久的に終わることを意味していますし、
これから、また新しい出会いがあるんだよという意味も含まれています。